パソコン要約筆記
2000.3.11

以前、ある研究会に参加して、発表内容をパソコンでどれぐらい入力できるか試みたことがある。そこでは江戸時代の人口史に関して三人の人が話したが、やってみていろいろなことが分かった。

まず一人目。この人はレジュメがあり、それに沿った形で話を進め、論旨の展開も分かりやすかった。そのためかリアルタイムの入力もかなりできた。語尾をはしょって、内容を適度に要約しながら入力するのだが、少し準備してパソコン辞書を整えておけば、「かなりいいところまで行けるかも知れない」という感触を得た。

二人目は外国人の女性。日常会話には不自由ないほど日本語は上手だ。発表の中でも意味の通らない日本語を話しているわけではない。一つ一つの文はよく分かる。ところが、私の方はまるで入力ができない。話の内容が配られた資料(集計データ)の説明だったこともあるが、要するに話に起承転結がなく、単純な文の羅列になっていることから、どこをはしょって要約すべきかとっさの判断ができないのだ。この場合は、あまり考えずにとにかく話したとおりに入力していくのが正解だったのであろう。

そして、三人目は史料のデータベース化に関する発表。膨大な史料をExcelやVisual Basicで作られたフォームに入力し、でき上がったデータベースを研究者がWeb上で利用できるようにする・・・という話。そもそもこれを聞くために私は京都まで来たのだが、パソコン入力の方は、これまた全くできなかった。理由は簡単。話の内容に興味があったので、理解しようと中身を聞き過ぎてしまったせいだと思う。

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どんなに速くパソコン入力できる人でも、人の話し言葉をすべて入力することは不可能だ。となると、何らかの要約が必要となるが、考えてみれば話し言葉をリアルタイムに要約するのは結構な知的作業だと思う。要約の度合が高くなればなるほどむずかしくなるだろうし、他人が読んでも分かる言葉で書くとなればなおのこと大変だ。どんなトレーニングをしたらうまくなるのか興味のあるところ。同時通訳をする人は、頭の中でどういう処理をしているのか知らないが、通じるものがあるのではないかとも思う。

 *注

ところで今、パソコン要約筆記が注目されている。例えば、会議に出席した耳の不自由な人の隣に座り要約筆記してあげる場面を考えてほしい。もちろん、手書きで要約筆記することもできるが、パソコンは手書きの何倍もの速さで入力が可能だ。耳の不自由な人の多い集会なら、大型スクリーンに字幕を表示させればもっと多くの人が利用できる。また、字幕付きのテレビ放送もだんだん増えていくだろう。カスタマーセンターの電話オペレータがリアルタイムにパソコン入力できれば、苦情処理のデータベースも作りやすい。

パソコン要約筆記の技術面の研究や、入力オペレータの養成を熱心に進めているボランティアグループもあるようだが、オペレータの養成は一朝一夕にできるものではなく、実情はなかなか厳しそうだ。しかし、これからもっと研究されてよい分野だと思う。(次号へ続く

一人静  


(注) NN4.5, NN4.7, IE3.02, IE4.0, IE5.0(いずれもWindows95/98版)で確認。それ以外ではうまく動かない可能性があります。NN3.xxではスピードが半分になります。

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