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2007.01.30
ジャケツイバラの冬芽兄弟たち

菱山忠三郎氏の「樹木の冬芽図鑑」(オリジン社)にはジャケツイバラの冬芽について面白いエピソードが書かれている。
ジャケツイバラの冬芽は、下記写真のように5個前後の冬芽が縦に並ぶのだが、このうち成長して芽吹くのは一番上の主芽だけ。二番目以下の副芽は自分より上の芽が何らかの事情で育たなかった時の予備の芽だ。主芽が無事に成長すれば、予備の芽は消えてしまう運命なのだが、何と4つも5つもの予備を持っているのだ。
菱山氏は高校生の頃この話に感動し、実際に一番小さな最後の芽だけを残して上の芽を全部とってしまったことがあると言う。時間はかかったけど、小さな小さな“末っ子”が本当に芽吹いた時に、その生命力といじらしさに再び感動を覚え、以後冬芽への関心がいっそう強くなったそうだ。

昨年の5月21日、荒井沢市民の森で見たジャケツイバラの花は感動ものだったが、あそこなら冬芽を間近で見ることができるのではないか?と探しに行くことにした。湿地の入口で、偶然にもあの時谷に下りて行く道を教えてくれた“森のおじさん”に会う。あの時の私達の喜びようがよほど印象的だったのか、「ああ、あのジャケツイバラの時の人?」と向こうも私達を覚えていてくれた。

さて、皆城山山頂に向かう急勾配の階段道を登って問題の場所に着く。花の時期は湿っぽい草むらの中を分け入って花に辿り着いた記憶があるが、今の時期は草は枯れているし、足下も割と乾燥しているので助かる。少し谷に下りて行くと、斜面を這うジャケツイバラの蔓があちこちに見られた! しかし、棘がすごい。バランスを崩しそうになっても間違っても木を掴んだりしてはいけないし、しゃがめばひっかけそうで要注意だ。三脚を杖代りにして小さな冬芽兄弟を探して歩き、何とか形のよい子たちをゲットできた。
稀にもう展開している芽もあったが、ほとんどはまだ冬芽の状態。見ていると、この兄弟たちの並び方にはある種の感動を覚える。ほとんどは“長男”から“末っ子”まで少しずつ大きさが違っているが、ほとんど世に出る(?)ことがないであろう次男以下の弟たちも、決してすぐ上の“おにいちゃん”を追い越さない程度に成長しているのだ。いじらしいという他はない。

この日は3月末から4月のぽかぽか陽気、この春は芽吹きも早いのだろうか・・?などと思いながら、ホオノキ、キハダ、シラキなど、個性豊かな冬芽との出会いを楽しんだ。
(写真はいずれも、2007.1.30/横浜市栄区・荒井沢市民の森にて)

ジャケツイバラの冬芽兄弟
▲4人兄弟。長男だけが大きい
▲5人兄弟。大きさの順に並んでいる
▲少しアップで。次男以下は小さい
▲長男が成長し始めている
▲横から見たところ。末っ子だけが小さい
▲展開してる頂芽。やはり4つの副芽を従えている

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