ショックな場面!!



                                                    じぞうさん

 
 10月は2回もショックな場面に遭遇した。

 はじめは、我家の犬が夏から脱毛がひどくなったので、犬猫病院にその薬を貰いに行った時である。
 病院に入ると、病気の犬を入れるゲージの中に、背広を着て、ネクタイをした中年の男性が座っていた。
 よく見ると、その人は点滴をした老犬を抱きながら、一生懸命に犬の背中をさすっていた。「どうしたのですか」と声をかけると、「気が狂ったように暴れたので、やっと病院に連れて来て、先生に見てもらったら、犬が肺炎を起こして、脳圧が上がったので、こんなことになったといって、点滴をしたらやっと落着きました。買主がしばらく抱いていると犬が安心するからと言われたので抱いているのです」と答えた。犬の年を聞くと17年だと言う。

 もう一人診察室に入って獣医さんと話している人は「夜になると犬がむやみに鳴いて近所の方から苦情がきているので何とかして貰いたい」と相談していた。これに対して、獣医さんは「犬が年取って、耳が悪くなり、雑音が聞こえて不安だから、鳴いているのです。安定剤を飲まして様子を見てください」と言われて薬を貰って帰っていった。

 我家には12才と11才の犬がいるが、もしこのようになったらどうしたらよいかと考え込んだ。
 昔は犬の寿命は7年から8年と言われていたが、最近では餌や環境のよくなったので、17年,18年は当たり前になった。人間では90才位になると言われている。

 次の場面はもっと大変だった、

 10月19日午後紫陽花に用事があって、帰りに横浜に行こうと北鎌倉駅の鎌倉寄りでベンチに座って本を読みながら電車を待った。
 ゴーと言う音で電車が入って来たと思うと急ブレーキを掛けて電車が止まった。その時、私の傍に座っていた2人の女性が抱き合ってワンワンと泣いていた。どうしたのかと見ると電車は途中で止まったままだった。
 駅員が「人身」と叫びながら前の方に駈けて行った。駅員が電車の下の方を見たので私も覗くとホームと電車の間に女性の足とスカートが見えた。すると、近くにいた人が「飛び込み自殺だ」と言った。
 私は横浜行きを止めて、駅の外に出て、鎌倉行きのバスを待っていると、すぐに、警官や応援の駅員が走って来た。その後、救急車が来て、はじめはタンカーを持ちだそうとしたが、それを止めてシーツのような大きな白い布を持ってホームに入って行った。すぐに、血のついた白い布に人間らしいものを入れて運んで、救急車に乗せて走り去った。

 翌日の新聞に自殺した人は54歳の女性と載っていた。
 この間、約30分電車は止まったままで、踏切の信号は鳴りっぱなしだった。
 私はバスがこない内に下りの電車が来たのでそれに乗って鎌倉に帰った。
 2.3日はこの光景が時々浮かんで来て嫌な気持ちだった。

 犬の命を大切にするかと思うと、片方では自分の命を粗末にするのを見るとやり切れない気持ちだった。